ハットトリックとは?帽子が語源の意外な真相や4・5得点の呼び方を解説
サッカーの試合で1人の選手が1試合に3ゴールを決めた瞬間に飛び出す「ハットトリック」。スタジアムやSNSが一気に沸き立つサッカー界きっての華やかな記録ですが、「なぜサッカーなのに帽子(ハット)と呼ぶのか」「4点や5点決めた時は何と呼ぶのか」と疑問を持ったことはないでしょうか。
スポーツ観戦の興奮をさらに深めるために、ハットトリックの厳密な成立条件から、19世紀の英国に遡る発祥の歴史、世界記録や他競技での意味まで、知っておくべき知識を余すところなく紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:ハットトリックの語源はサッカーではなく19世紀のクリケットであり、3連続アウトを達成した投手に「帽子」が贈られた出来事に由来する。
- 要点2:4得点は「ポーカー」や「ハウル」、6得点は「ダブルハットトリック」と呼ばれ、右足・左足・頭で各1点奪う「パーフェクトハットトリック」という上位概念も存在する。
- 要点3:達成者が試合球を持ち帰る慣習はイングランド発祥であり、中山雅史の4試合連続ハットトリックなど日本発のギネス記録も刻まれている。
【基礎知識】ハットトリックとは?サッカーにおける達成条件と基本ルール

サッカーにおけるハットトリックは、同一の選手が1つの試合で3得点以上を挙げることを指します。前半と後半の90分間に加え、トーナメント戦などの延長戦で決めたゴールも対象としてカウントされます。ただし、試合終了後のPK戦(ペナルティシュートアウト)で決めたキックは公式記録の得点にならないため、ハットトリックの条件には含まれません。
判定基準において「試合中のPKによる得点」も1ゴールとしてカウントされるため、PKを含めた3得点でもハットトリックは成立します。また、前半だけで3得点した場合は「前半ハットトリック」と呼ばれるなど、短時間での達成はメディアで大きく称賛されます。
さらに、近年ファンの間でも広く認知されているのが「パーフェクトハットトリック(Perfect Hat-trick)」です。これは、1試合の中で「右足」「左足」「ヘディング(頭)」の3つの異なる部位でそれぞれ1点ずつ決めて3得点を達成する極めて難易度の高い記録です。あらゆるシュート技術を万能に備えている証とされ、ストライカーにとって最高の栄誉のひとつと位置づけられています。
なぜ「帽子」なのか?クリケット発祥の意外な語源とプレゼントの真相

サッカーを象徴する言葉でありながら、なぜ「ハット(帽子)」の「トリック(芸当・手品)」と呼ばれるのか。その起源はサッカーではなく、1858年の英国クリケット界にあります。
当時、クリケットの試合においてハイド・ハイラム・スティーブンソン(H.H. Stephenson)というボウラー(投手)が、3球連続でウィケットを倒して打者をアウトにするという前代未聞の快挙を成し遂げました。この神がかり的な離れ業に熱狂した観客やクラブ関係者が、帽子を脱いでお金を投げ入れる形で寄付(カンパ)を募り、その集まった資金でスティーブンソン選手に新しい特注の帽子をプレゼントしたことが直接のルーツです。
「手品師が何もないシルクハットからウサギや鳩を取り出す奇術(ハットトリック)」に例えられたという説も広く出回っていますが、歴史的事実としては「偉業を称えて実際に帽子を贈呈した出来事」が語源の真相です。このクリケット発のスラングが、やがて「3回連続の成功」「1試合3ゴール」を指す言葉としてサッカーをはじめとする他競技へ波及していきました。
3得点だけじゃない!4得点・5得点・6得点の呼び方と「ダブルハットトリック」の意味

サッカーにおいて、1人の選手が1試合で3得点を超えるゴールラッシュを見せた場合、ゴール数に応じた固有の呼び名が存在します。
代表的なスコアごとの呼称は以下の通りです。
【ゴール数ごとの主な呼称】
・3得点:ハットトリック(Hat-trick)
・4得点:ポーカー(Poker) / ハウル(Haul)
スペインやイタリアなどのラテン系フットボール圏ではカードゲームの4カードになぞらえて「ポーカー」と呼びます。一方、イングランドをはじめとする英語圏では「獲物をまとめて手に入れる」という意味から「ハウル(4-goal haul)」と表現するのが一般的です。
・5得点:レパード(Leopard) / マニータ(Manita) / ペンタトリック
スペイン語では手の平の5本指を意味する「マニータ」がチームまたは個人の5得点を表すスラングとして定着しています。
・6得点:ダブルハットトリック(Double Hat-trick)
ハットトリック(3得点)を2回分達成したという意味で「ダブルハットトリック」と呼ばれます。プロのトップリーグでは滅多にお目にかかれない大記録です。
なお、海外メディアでは4得点以上であっても「スーパーハットトリック」と総称されるケースが多く、厳密な国際統一規格があるわけではありませんが、観戦時に用語を知っておくと各国の現地実況をより深く味わうことができます。
試合球は記念にキープ?ハットトリックでボールを持ち帰る理由と伝統の舞台裏
海外サッカーやJリーグの中継を見ていると、ハットトリックを決めた選手が主審から試合球(マッチボール)を受け取り、大事そうに抱えてピッチを去るシーンを目にします。この「ボール持ち帰り」はフットボールの伝統的な特権ルールです。
起源は近代サッカーの母国イングランドにあり、偉業を達成した記念品(メモラビリア)として持ち帰ることが暗黙の慣習となりました。現在では世界中のプロリーグで定着しており、達成選手はドレッシングルームへ戻った後、チームメイト全員や監督からボールにサインや祝福のメッセージを書き込んでもらうのが恒例のセレモニーとなっています。
もし同じ試合で両チームの2選手がハットトリックを達成した場合は、先着順で最初の達成者が公式球を持ち帰り、2人目の達成者には審判団から予備の公式マッチボールが贈呈されるなど、歴史ある敬意の文化が現在も厳格に守られています。
ギネス世界記録からJリーグまで|語り継がれるハットトリックの歴史的快挙
フットボールの長い歴史の中には、人々の記憶に刻まれる圧倒的な個人記録が存在します。
【世界記録:1試合最多得点】
国際Aマッチにおける単独最多得点は、2001年のW杯予選(オーストラリア対アメリカ領サモア)でオーストラリア代表のアーチー・トンプソンが記録した1試合13得点です。試合自体も「31-0」というギネス記録となり、トンプソンは1人でダブルハットトリックを2回分以上積み上げる驚異的なゴールラッシュを見せました。
【Jリーグ発の世界記録:中山雅史の4試合連続ハットトリック】
日本が世界に誇る大記録が、1998年にジュビロ磐田の中山雅史(ゴン中山)が達成した「4試合連続ハットトリック」です。4試合で計16ゴールを叩き出したこの記録は、当時のギネス世界記録に公式認定され、世界屈指のストライカーたちも未だ破ることのできない金字塔となっています。
また、Jリーグの最速ハットトリック記録としては、わずか3分間で3ゴールを奪った記録などがあり、一瞬で試合の展開をひっくり返す破壊力こそがハットトリックの醍醐味と言えます。
サッカーだけじゃない!ダーツやF1における「ハットトリック」の意味と定義
「ハットトリック」という言葉は、サッカー以外の競技でも「同一試合における3つの連続的・複合的な偉業」を表す専門用語として使われています。
【各スポーツにおけるハットトリックの定義】
・ダーツ:1ラウンド(3投)で3投すべてを中心の「ブル(Bullseye)」に命中させることを意味します。初心者にとっても中上級者にとってもステータスとなる最高峰のアワードです。
・モータースポーツ(F1):1つのグランプリ週末において「ポールポジション獲得」「決勝でのファステストラップ記録」「決勝レース優勝」の3冠を完全制覇することをハットトリックと呼びます。
・アイスホッケー:サッカーと同様に1試合3得点を指しますが、達成時に観客がリンク上へ自分の帽子を一斉に投げ込む豪快な祝福演出が名物となっています。
・ラグビー:1試合で1人の選手が3トライを挙げた際に用いられます。
【ハットトリックとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:オウンゴール(OG)でもハットトリックは成立しますか?
A1:成立しません。ハットトリックは攻撃側が相手ゴールに決めた得点のみがカウントされます。万が一、不運にも1試合で3回のオウンゴールを記録してしまった場合、俗称としてメディアで話題にされることはあっても、公式なハットトリック記録として認定されることはありません。
Q2:4得点決めた場合、「ハットトリック」と呼ぶのは間違いですか?
A2:間違いではありません。「4得点(ポーカー)を達成した」と表現することもできますし、「ハットトリックを達成した上でさらに1点を追加した」と捉えることもできます。公式記録上も3得点以上の時点でハットトリック達成の権利を満たしています。
Q3:PK(ペナルティキック)のゴールだけで3点取ってもハットトリックになりますか?
A3:通常の試合時間内(前後半および延長戦)に得たPKであれば、3得点すべてがPKによるものであっても公式なハットトリックとして認められます。ただし、試合決着のための「PK戦」でのゴールは含まれません。
まとめ|ハットトリックの背景を知ることでスポーツ観戦の熱量はさらに高まる
何気なく耳にする「ハットトリック」という言葉の裏には、19世紀のクリケットファンが選手へ帽子を贈った粋な敬意や、現代まで受け継がれるボール持ち帰りの美しい伝統が存在します。
単なる3得点にとどまらず、左右の足と頭で奪うパーフェクトハットトリックや、4得点(ポーカー)、6得点(ダブルハットトリック)といった多彩な表現を知ることで、ピッチ上で繰り広げられるドラマはより鮮明に見えてきます。スタジアムや画面越しに圧巻のゴールラッシュを目撃した際は、その歴史と意味を思い浮かべながら熱狂を味わってみてください。 (出典: ハット トリック と は(Yahoo!ニュース))